SieMatic IDコンテストにおいて、審査員は次のプロジェクトを”Best of the Best”、すなわち応募されたすべての中で最も説得力のある作品として選出しました。
このキッチンは、国内外においてミニマリスト建築で有名な黒崎 敏氏による住宅で、SieMaticのPUREスタイルコレクションに基づいてプランされたものです。黒崎氏はこの作品を”COVER”と名付けました。クールでメタリックな外観とは対照的に、室内はまるでコンサートホールを思わせるやわらかい光で満たされています。特に印象的なのは、空間に全く新しい遠近感と広がりをもたらしている天井の構造です。夜間、キッチンはまるでコンサートホールの真ん中にあるピアノのように見えます。そしてそこは料理と食事のプロセスを最高傑作へと引き上げるステージになります。一方、陽射しが降り注ぐ昼の間は、ビストロのようです。料理や食事の間、「楽しむこと」にクローズアップする生活空間。すべての余分なものを排除して生まれたミニマリズムは、穏やかなだけでなく気高い雰囲気を作り出します。自然光を取り入れ、尚且つ外部環境と遮断する事により、人はまるで別世界に足を踏み入れるかのような気持ちになります。明るい陽射しと夜の間接照明の独創的な相互作用がキッチンの異なる二面性を導き出すと共に、素晴らしい全体像を形づくっています。
この空間をとても特別なものにしているのは、全体バランスへの配慮です。美しく作られ、巧みに構成されています。空間はシンプルであり、それでいて興味深いーPUREの直線的でなめらかなデザインを保ちながらも温かくて心地良い。住んでみたいと思うような空間です。(Mick De Giulio)